理学療法の評価と治療
理学療法に関連する臨床・研究・教育と評価・治療について書いていきたいと思います。
膝の動的安定化
2015/01/19 Mon. 20:03 [edit]
膝の衝撃の吸収には動的安定化が重要である。立脚期には膝の伸展から屈曲が生じる。
膝の屈曲に伴い靭帯の緊張は緩まり、
衝撃を吸収する。
その際には実は大殿筋の働きが関与する。
大殿筋による股関節の伸展で大腿骨遠位を
脛骨関節面上に押し付ける安定性、
股関節の外旋で脛骨は相対的に内旋し、
靭帯による安定性を高める働きが生じる。
膝OA患者の評価において
膝周囲筋の筋力を確認することはもちろんだが、
股関節の伸展はおろそかになりやすい部分かもしれない。
股関節の膝に与える影響を考慮し、
股関節の機能改善も確認することは必要である。
1)石井慎一郎:レクチャーノート 歩行の臨床バイオメカニクス
[改訂版],南西書店,2013
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Category: 歩行
歩行と大殿筋
2015/01/15 Thu. 22:06 [edit]
立脚期では大殿筋の働きが重要である。立脚の基盤になるとともに重心の上前方移動に
関わるからである。
歩行での大殿筋の作用は上部と下部で特殊な働きをする。
大殿筋の上部線維は股関節軸より頭側となるため、
作用は股関節の伸展・外転・外旋となる。
それに対して大殿筋下部線維は股関節軸より尾側となるため、
作用は股関節の伸展・内転・外旋となる。
歩行の立脚期では踵接地直後では、
大殿筋下部線維が働き伸展・内転・外旋し、
重心を支持側へ誘導する。
その後、わずかに遅れて大殿筋上部線維が働き、
伸展・外転・外旋し支持側へのブレーキとして働く。
もし大殿筋の下部線維の筋出力不全や遅延が生じた場合は、
支持側に多く誘導されることで骨盤のswayが生じる。
この股関節伸展にともなう大殿筋の働きだが、
通常の伸展では上部線維と下部線維を
分離して働かせることは困難である。
これには足部の動きの関係性が考えられている。
踵接地外側で大殿筋。
踵接地内側で大殿筋上部線維が働く。
立脚期からの股関節の伸展は重要なことは周知の通りだが、
大殿筋の上部線維と下部線維の活動の差異は
あまり知られていないかもしれない。
詳細に考えれば考えるほど体の動きは、
緻密に連動していることに驚かされる。

Category: 歩行
高齢者の歩行障害
2014/06/16 Mon. 23:01 [edit]
高齢者の歩行では体幹の前傾位は多い。体を起こすように伝えても、
なかなか起こした状態では歩行することは困難である。
現象はそうしなければならない理由がある。
体幹の前傾位にしなければならない理由で多いのは、
股関節の伸展制限である。
筋力の発揮は関節運動の中間位付近が最も強い。
股関節の伸展角度が小さい場合はどうなるだろうか?

筋力が発揮しやすい状態で
下肢の支持を得ようとすると赤い部分となる。
ようするにこの赤い部分は
最も筋力が得やすい良好な位置となる。
股関節の伸展が得られないため、
前方への推進力が困難なことが一つ。
またこの下肢の位置で支持するにはバランスが悪いため、
体幹を前傾させることになる。
では下肢の伸展可動域が大きければどうか。
当然、前方推進力も得られるし、
下肢の支持も問題ない位置となるため、
体幹は前傾させる必要もなく歩行することが可能である。

高齢者の歩行障害。体幹の前傾とともに、
腰痛や膝痛など生じやすいものであるが、
股関節の伸展の改善とともに
得られるものも多いのではないだろうか。
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歩行 立脚の後期
2014/03/20 Thu. 20:21 [edit]
立脚期で踏ん張りにくという訴えがあるとする。そこから臨床的にどのように評価を行い、
どうアプローチをしていけば良いのだろうか。
一つの方法として紹介する。
立脚期に踏ん張りにくいということで、
股関節の伸展が阻害されていると考えられる。
腹臥位で下肢を他動的に挙上した場合に、
反対側と比べて足の重みが強い場合は、
腸腰筋や直筋の緊張が関係する。
そのため同部の筋の抑制を考える。
股関節の伸展に対して、拮抗する作用を持つ為である。
また自動運動で挙上をした場合には、
筋力を疑う前に、まず可動性を確認する。
可動性が低ければ筋力は発揮できない為である。
股関節の伸展に関与する脊椎、仙腸関節、
股関節の可動域や副運動の評価を行う。
それらに問題がない場合は筋の問題を考える。
ここでは2関節筋かどうかで判別することも可能なので、
膝伸展位と膝屈曲位の筋力評価を行う。
膝伸展位では大殿筋とハムストリングス。
膝屈曲位では大殿筋の筋出力が把握できる。
問題のある部分にある部分にアプローチするには
能力と質問から広い視野からみていき、
徐々に絞り込んでいく。
それにより相手のニーズと専門的な
原因を一致することが可能になってくる。

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歩行 遊脚期
2014/03/19 Wed. 22:18 [edit]
遊脚期で足が重たいという訴えがあるとする。そこから臨床的にどのように評価を行い、
どうアプローチをしていけば良いのだろうか。
多くの要素はあるが一つの方法として紹介する。
遊脚期に足が重たいということで、
股関節の屈曲が阻害されていると考えられる。
背臥位で下肢を他動的に挙上した場合に、
反対側と比べて足の重みが強い場合は、
ハムストリングスの緊張が関係する。
そのためハムストリングスの抑制を考える。
股関節の屈曲に対して、拮抗する作用を持つ為である。
また自動運動で挙上をした場合に、
付け根が重いのか、膝下が重いのか質問をする。
付け根が重い場合は、腹横筋・腸腰筋・四頭筋が考えられるため、
それぞれ筋力の評価を行い、
出力低下を生じている部分を促通していく。
また膝より下が重たい場合は前脛骨筋の評価を行い、
出力低下があれば促通を行なう。
臨床では限られた時間の中で評価とアプローチを行なうため、
下肢の筋力をすべて測定するのは困難である。
歩行の際にに立脚期に問題があるのか。
遊脚期に問題があるのか特定し、
さらにこのように評価を絞り込むことで、
時間を有効に用いることが可能になるかもしれない。

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歩行 立脚の前期
2014/03/18 Tue. 21:44 [edit]
立脚期では過重が下肢にかかり、それに伴い床反力が体に返ってくる。
この際にはアライメントが重要になる。
部分的に硬い関節があると、
その部分は適切なアライメントを
形成することができなくなる。
簡単に言うと曲がっている部分は過重をした際に、
より曲がるような動きを形成することになる。
そういった部分はストレスを受けることになり、
疼痛を生じる原因となる。
改善するためにはその曲がる動きの
反対方向の可動性の改善と筋力の向上。
そして周辺関節の硬さの改善が必要となる。
歩行とアライメントの関係は評価とともに
どうアプローチしていくのかといった
考察も多角的にとらえる必要がある。

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姿勢変化と歩行
2014/03/14 Fri. 20:31 [edit]
歩行は姿勢の変化を大きく受ける。高齢の方は足が上がらずに、
些細な段差で足をつまずくことが多くある。
家の布団や絨毯などにつまづき、
「1cmぐらいのところにつまずいた。
足が弱くなってしもうたんじゃわ。」
などと話をされる方も多い。
足首を上に上げる足関節の背屈。
前脛骨筋の働きが重要になるのだが、
このように足が上がらない患者さんでも
筋力低下していない場合も多い。
もっと詳しく話を聞くと、つまづく前に
急いでいることが多かったりする。
トイレに行こうとしていた。
電話にでようとしていた。
また両手に何かを持って運んでいることもよくある。
では筋力は低下していないのに、
足が上がらない。
そして、急いでいたり何かを両手に持ったりで
足が下がる理由とはいったいどういったものなのだろうか。
これは急ぐことや両手で何かをもつことによる、
前方重心が原因となる。
急ぐ際には体を前に持っていく必要がある。
体幹が前屈傾向であったり、
股関節の伸展モーメントが減少している場合は、
体を前に傾ける前方重心が有効となる。
しかしながら、前方に重心となることで、
足関節は底屈方向に促されやすく、
足は上がりにくくなるのである。
また急いでいる状態では筋が過緊張を起こし、
筋紡錘が通常通り機能しないので
位置覚や運動覚に誤差が生じることもある。
また歩いているときのいつもの足の上がりをイメージしていると、
急いだときの上がり方では思った以上に上がっておらず、
誤差を生じてつまずくということもあるだろう。
つまづくということをもう少し、
分析していくことで自分の思いとは違った
発見があるかもしれない。

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効率の良い歩行
2013/08/22 Thu. 21:39 [edit]
歩行は負担が少なく、安定したものがよいのは言うまでもない。
このような効率の良い歩行には
力学的効率性と構造的優位性が必要になる。
力学的効率性とは力が無駄なく伝達され、
動きが生じている状態である。
それにより動作には流動性があり、
滑らかな動きを生じることになる。
また動きのリズムも一貫性があり、
左右の足のリズムが崩れることないため、
足音も一定のリズムを作り出すことになる。
構造的優位性とは足先から頭部までの骨が
バランスよく配置されていることが必要である。
それにより、筋の緊張のバランスが保たれ、
柔軟性が高くなっている他、
筋活動も最小のものとなる。
これらを作り出すためには
関節の可動性と適切な筋の働き、
円滑な神経機能とそれを命ずる脳のすべてが
オーケストラのように協調する必要がある。
一つ一つの機能と全体的な調和を見る視点は
常に磨いていく必要がある。

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求める歩行とは2
2013/08/21 Wed. 07:27 [edit]
痛みであれば筋肉や関節ときには神経が、圧縮されたり牽引されるストレスを受けている。
例えば一部の筋に負担がかかる場合は、
周辺の筋力の低下が認められることがある。
また一部の関節に負担がかかる場合は、
その周辺関節の硬さが影響している場合もある。
またそれらの部分は動き方によっても
負担のかかり方は変わる。
疲れであれば過剰な身体活動を意味する。
不安や気分が乗らないことによる精神状態で
過剰な筋収縮が生じたることもある。
また廃用症候群で遅筋の萎縮が生じたり、
慣れない動作で速筋優位の運動様式になることも
原因として挙げられる。
スピードが遅い場合は、力がうまく伝わっていない場合がある。
地面についた足から床反力をうまく利用することが必要であるが、
適切なアライメントで立脚できなかったり、
股関節の伸展モーメントが乏しく、
前方への推進力が減少したりすることも影響する。
以上の例はあくまで一部分になるが、
これらのアプローチの視点は患者さんの
求めているものや環境によって変化する。
私たちの求める歩行が患者さんの求める歩行と
一致するかどうか十分検討する必要があると考える。

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求める歩行とは1
2013/08/20 Tue. 22:04 [edit]
歩行に対してアプローチをするときは、どんな歩行を目指すのかを明確にしているだろうか?
療法士の視点での歩行が必ずしも
患者の求めているものと一致しないことも少なくない。
求めているのは
どのくらいの距離なのか?
どんな場所を歩くのか?
どんな歩き方なのか?
こういった条件によっても、
アプローチするものは変わってくる。
訴えとしては痛みがあるなら、
歩行時の機械的ストレスの軽減を考慮する必要があるし、
疲れなら無駄な身体活動を考慮する必要がある。
スピードが遅いのであれば力の伝達にロスがあるので、
それぞれ見ていく視点が変わり、
アプローチする場所も変化する。
次回はそれぞれの視点の例を述べていきたい。
Category: 歩行